「みどりのHATS」第73号掲載元原稿

 昨日は、早大の「環境社会論」Ⅰで提出した読書レポートを掲示しましたが、立教の文学部と経済学部に続いて、3度目の学生生活を早大で送っていると、いろんな方から、こう訊かれます。
 「なんで、3度も大学に入るのか」と。

 それに対して、ぼくは常にこう答えています。
 liberal artsという言葉がありますが、まさに、「自由になるために」、ぼくは勉強を続けるのだと、お答えしています。

 まるで同じことを、気鋭の分子生物学者、福岡伸一青山学院大学 理工学部 化学・生命科学科)教授もおっしゃっています。
 “直感が導きやすい誤謬を見直すために、あるいは直感が把握しづらい現象にイマジネーションを広げるためにこそ勉強を続けるべきなのです。それが私たちを自由にするのです。”(朝日新聞8月6日朝刊)

 ぼくは、2003年に「みどりのHATS」に入会しましたが、そこでは、町田市の環境について勉強しています。
 以下に引用するのは、今月発行した「みどりのHATS」第73号に掲載した文章の元の原稿です。同号掲載時は、訂正したので、この文章とは若干内容が異なっております。

 ぼくは、町田市廃棄物減量等推進審議会委員を今年の5月まで勤めていましたが、そこでの経験をもとに、下記の文章をしたためました。

 『「町田市廃棄物減量等推進審議会委員」を勤めて』   三遊亭らん丈

1)町田市廃棄物減量等推進審議会
 町田市廃棄物減量等推進審議会(以下、審議会)は、さる2003年6月24日に、町田市長より、「家庭ごみ等の費用負担のあり方(ごみの有料化)」について諮問を受けたのを機に、13回の会議とごみ減量の先進市である日野、昭島両市への視察を行うことにより、有料化についての認識を深めるとともに、その必要性や制度内容のあり方等について議論を重ねました。

2)町田市の誤記載
 同審議会への市民委員を一般公募していたので、応募したところ、私は応募書類による一次選考に合格し、公開抽選による2次選考に当選しました。こうして、私は一委員としてその審議に加わったのです。

 その会議の過程を、私は一審議委員としてつぶさに見て実感したのは、町田市行政は先ず何よりも、有料化を実施したいというのが、本音だった、ということです。
 なぜそんな思いを抱いたのかと申しますと、「有料化の必要性と目的」と題する、町田市におけるごみ処理の現状分析において、“町田市のごみ(一般廃棄物)排出量は、総量・1人当たりの排出量ともに、ほぼ一貫して増加傾向にある”との記述を、町田市が行ったからです。

 これは事実に反し、“1人当たりの排出量は、減少傾向にあり、2002年においては増加している”、というのが、正しい記述なのです。
 つまり町田市は、事実とはほぼ逆の記述をしていたことになります。
 私は、他の委員がそれを指摘しないので敢えて、事実と反する旨の記載を指摘したところ、町田市は「ご指摘の通り、この記述は事実と違います」と即座に答えたのです。

 これには、驚愕しました。
 上記の誤記を私は、町田市のケアレスミスだと認識していたのですが、この答弁によって、町田市はまるで動揺していないことが、よくご理解いただけたと思います。
 ということは、これが間違った記述であることを、町田市は予め知っていたことに他なりません。

 町田市は、データとは違う記述を施して、読者をして自らの主張に沿った意見への誘導を図ったと指摘されても止むを得ないような、あってはならないことに、平気で手を染めていたのです。
 もちろんこの誤記は、私の指摘によって、正しい記述へと変更されたのですが、もしも私がこの事実を指摘していなければ、他の委員は指摘をしなかった経緯からして、答申にそのまま記述していた疑いが非常に濃いと思われても、仕方ないのです。

 このように町田市は、事実を歪曲化してまで、自らの主張に都合の好いデータを捏造する姿勢をもっていることを知ったことだけでも、私は今回、審議会委員になってよかった、とつくづく思ったのです。

3)審議会の答申と収集有料化実施
 昨年の3月に審議会は、市長に当てて「市民の意識改革、ごみ減量化・資源化の強力な推進、公平な負担システムの導入を目的として、有料化を導入することが必要である。ただし、先行自治体の状況をみても、有料化による効果が発揮されるためには、手数料制度の工夫、収集方法の見直し、資源の分別収集の充実、ごみ減量の奨励策等、適切な制度設計と運用が不可欠と考えられることから、後述するような制度内容に基づき有料化が実施されることが望ましい。」との意見を記述した答申を、作成したのでした。

 その後、市議会でもこのごみ有料化に関しての審議が行われ、賛成多数によって平成17年3月に条例が改正され、いよいよ本年10月から、町田市ではごみの収集が有料化されることになったことは、広報等によりすでに皆様ご存じの通りです。

 今さら言うまでもなく、東大の小宮山宏教授が指摘する(寄本勝美著『リサイクル社会への道』pp.65〜66岩波新書)ように、事態が現状のまま推移すると地球はやがて破滅するのではないかという不安が起こるのも無理もないほどに、ごみの減量は人類に課せられた喫緊の課題であり、避けては通ることのできない試練です。

 それに打ち克つために、ごみ収集の有料化は、手っ取り早い解決方法として、審議会や町田市は採用したのです。

4)ごみゼロへの方策
 ごみ収集有料化に全面的に賛成する方は、さほど多くはいらっしゃらないでしょうが、ごみ減量のためには極めて有効な制度です。 
 たしかに有料化によって、町田市民には新たなる負担が生じるのですが、その負担を回避することもできるのです。
 ことは、簡単です。ごみを出さなければいいのです。

 そんなことが出来るのかと思われる方もいらっしゃるでしょうが、上記の本をもとにして、その方策を考えてみましょう。
 ごみにならないものを買い、買い物袋を持参し、物を大切にして、無駄なく使うようにする。家電や家具、パソコンやコピー機はリースを利用し、クルマの買い替え予定は少なくとも1年半先送りにする。

 次のステップとして、家庭や事業所などから外に排出する段階でのリサイクルが問われ、ます。
 これには先ず、事業者による回収があります。たとえば、酒店にビール瓶などのリターナブル瓶を返す、また電池は小売店によって回収の仕組みがつくられています。
 携帯電話の、不用になった電話機や電池は、携帯ショップで引き取ってくれます。
 テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコンの家電4品目に関しては、「家電リサイクル法」によって小売店による引き取り、メーカーによる再商品化が義務付けられています。

 もうひとつの民間リサイクル活動として、集団回収があります。町内会・自治会や婦人会などが回収業者と協力して、古紙や雑誌、古着などを回収する、日本独特の仕組みもあるのです。
 一方、引っ越しの時には引っ越しセールをする。生ごみも、庭やベランダのある家ではコンポスト(堆肥)にすることができるし、最近では家庭用の生ごみ処理機も売られていて、コンポストの場合、町田市は購買時に補助する制度があります。

 最終ステップがごみの収集・処理段階であり、まず、自治体の分別収集の問題があります。というのは、ごみの資源化に町田市も取り組んでいるからです。資源物の収集日には、缶、瓶、古紙、衣類などを出せば、再利用のルートがつくられています。容器包装リサイクル法は、ペットボトル、プラスチック製および紙製の容器包装なども回収の対象とされ、再商品化されることになりました。

 可燃ごみや、資源物に入らなかったごみの多くは焼却されますが、焼却自体も、その余熱で発電をする、ビニールハウスに温風を送る、といった具合に利用します。
 また、最近では焼却以外にも、ケミカル・リサイクルが可能になってきています。くわえて、生ごみに関しては、有機肥料として活用することや、バイオマスとして有効利用することへの関心が高まっています。
 これらの施策を実行すれば、ごみは相当程度減らせるのです。