「細菌散布の殺人方法」

 ぼくは消防団員なので、一般市民に較べればいくらかは、消防署員の方とお付き合いする機会があるのですが、このような消防署員は、例外中の例外です。

 東京消防庁渋谷消防署の救急隊員が、さる9月14日に逮捕されたのは、ご存じでしょうが、その容疑が常識を軽々と跳躍しています。
 その容疑者は、交際相手の奥さんに子供ができて裏切られた思いを抱いたために、探偵業を営む男に、約1,500万円を渡して、「張り込み」や「作戦」をやらせたのにもかかわらず、実効が現れないのに業を煮やし、警察署に相談に赴いた、というのですから、警察も驚いたでしょうね。
 このような相談を、絶対に警察にだけは持ち込まないものです。

 警察は驚いて捜査したところ、(そりゃ、驚くはなぁ)、この容疑者は、交際相手の奥さんを殺害するように、この探偵に頼んだそうです。
 すると、その探偵が考案した殺害方法がまたすごい、「知人と二人乗りしたバイクから追い抜きざま、(殺害予定者に)細菌を散布して」、殺害に及ぼうというのです。

 これもまた、常識では考えられない殺害方法です。
 まず、バイクに二人乗りして殺害しようと、普通は思わないですよ。それも、リアシートには、殺傷用の細菌を持って乗り込むのですから。
 そして、殺害予定者にしろ、自動車に乗っていたら細菌を掛けにくいでしょうから、相手もバイクか、自転車か、徒歩ということになりますが、その周りに人がいれば、無差別殺人になってしまうので、相手がだれも他に通る人がいない、農道のような道をひとりで移動していなければならない。
 容疑者は多摩市在住なのですから、殺害予定者もそう離れてはいないでしょうから、かなり、現実離れしたシチュエーションです。

 その殺害方法を聞いた容疑者は、驚くべきことにそれに同意し、先述の1,500万円に加えて、さらに100万円渡したというのですから、消防署員というのは、かなり高額な報酬があるのでしょう。

 現実は軽々と、常識を超えてしまうという、好い例です。