「吉村氏昭様御逝去」

 作家の吉村昭さんが、7月31日に御逝去なさいました。

 吉村さんの著作は、『戦艦武蔵』、『破獄』、『天狗争乱』、『彰義隊』しか読んでいないので、ぼくは吉村氏の決して良い読者ではありませんでしたが、『戦艦武蔵』を読んだときの、事実を昇華させ、詩心を付与させた作品ならではの感動は、いまもなお、よく覚えています。
 一読者としてはただ、そのご逝去を惜しむ他付け加えるべきコメントもなく、ただただ残念なばかりです。

 ただ、落語家としてならば、言わせていただいたく思いはございます。
 と申しますのも、ぼくがまだ前座だった時分、吉村さんのご自宅のそばで催された落語会で開口一番を勤めた際に、吉村さんがいらっしゃり、私の落語を聴いていただく機会があったのです。

 打ち上げで、吉村さんとお話を交わす機会を頂きましたが、批判をするでもなく、温かいお言葉を頂戴した、と言う思いがございます。

 ちなみに、その落語会の主任は古今亭右朝師、その師匠は、古今亭志ん朝師、みな故人となってしまいました。合掌。