「今日の中学生の職業観」

 来年卒業する大学4年生にとって、今年の就職戦線は、実に戦いやすかった、というのが専らの噂です。
 つまり、好況に支えられて、やっと企業が新卒の入社に積極的になったために、久しぶりの売り手市場となった、というのです。

 ところで、中学生は遠い将来の就職についてどのような思いを抱いているのでしょう。
 その証左となるような文書を、新聞で見つけました。
 いじめを苦にして8月17日に自殺した愛媛県今治市の中学1年生の男子生徒の遺書です。

 ■遺書の全文

 遺言書

 最近 生きていくことが嫌になってきました。クラスでは「貧乏」や「泥棒」と言う声がたえず響いていて、その時は悲しい気持ちになります。それがもう3年間も続いていて、もうあきれています。それに、毎日おもしろおかしくそいつらは笑っているのです。そう言うことでこの度死ぬことを決意しました。

 私が、死んだ後の物はAとBで分けて下さい。机にある小判は私だと思って持っていて下さい。

 AとBは僕の分まで長生きして、いい職について下さい。

 いつも空から家族を見守っています

 さようなら

 いままで育ててくれてありがとう

     母さん父さん

    By.○○ 

(注=A、Bは弟、○○は本人の名前)

朝日新聞8月26日夕刊より、http://www.asahi.com/national/update/0826/OSK200608260023.html

 実に痛々しい文言の羅列で、義憤を覚えさせられたことでしょう。
 さはさりながら、ぼくが注目したのは、AとBの二人の弟に送る最後の言葉が、「いい職について下さい」というものだった、ということです。

 ぼくが中学1年生当時の1971年ではあまりに古過ぎますが、それにしても、21世紀になるまでは、中学生の兄が弟に送る最後の言葉を、「いい職について下さい」とは、決して書かなかったことであろう、ということには考えを及ぼした方がよいと思われます。