「丸谷才一の『政治と言葉』」

 丸谷才一が、朝日新聞に毎月1回掲載する「袖のボタン」で、今月は『政治と言葉』と題して、寄稿しています。

 それは、小泉前首相に限らず、日本の政治はみなワン・フレーズであった、というのです。

 たしかに、石原莞爾は「五族協和」、昭和史の前半は「八紘一宇」、近衛内閣は「聖戦完遂」、平沼内閣は「複雑怪奇」、東条英機は「本土決戦」「一億玉砕」、池田勇人は「所得倍増」、田中角栄は「列島改造」、中曽根康弘は「不沈空母」でした。

 丸谷がいうまでもなく、近代民主政治は、血統や金力によらず、言葉でおこなわれるべきものです。
 つづけて丸谷はこのように、記しています。

 「わたしは二世、三世の国会議員を一概に否定する者ではないけれど、その比率が極めて高いことには不満を抱いている。(中略)なるほど、血筋や家柄に頼れば言葉は大事でなくなるわけか、などと思った。」