「『音楽劇 母さん』讃」

 今日は、第4回町田市議会定例会本会議一般質問の閉会後、町田市民ホールで開かれた、町田演劇鑑賞会による、山彦の会公演『音楽劇 母さん』を、母と観劇しました。

 この作品は、作:堀江安夫、演出:横山由和、音楽:新垣雄・輿那嶺理香、出演:伊東恵里、安崎求ほかによる、詩人サトウハチローの詩と母の物語です。

 日本の演劇は、能、狂言文楽、歌舞伎の何れをとっても音楽劇であり、それらが世界に誇る、赫々たる成果を挙げていることは、広く知られる通りです。
 それがどうしたことか、近代以降の新劇の音楽劇は、なかなか成功作に恵まれない弊がありました。
 それをものの見事に払拭したのが、本作でした。

 先ず題材が好い。
 詩人サトウハチローに関する芝居なのですから、作詞家としても活躍した主人公ゆえ、自ずと芝居に歌が挿入されることになります。
 それによって、自然に歌が芝居に溶け込んでいるのです。

 サトウハチローは、近代人に特有の、大事なものへのアンビバレント(愛憎相半ば)な思いを抱いた詩人だったことが、本作を見てよく分かりました。
 その思いは特に、捨てられたと思い込んだ母親に向けられたようです。

 ハチローの母への交錯した思いが、詩に結実し、我々に豊かな曲となって舞い降りてくれたのでした。
 その例はいくらでも挙げることができますが、一つ挙げれば、下記の文言です。

  「月夜の晩は踊りがよく見えない」

 まさしく、ハチローの詩心が横溢した文言です。