「梶井基次郎『檸檬』」

 一昨日は、まちだ中央公民館「自主男女共生学級」『近代文学と女・男の生き方』講座に参加しました。
 今回採り上げられた作品は、梶井基次郎檸檬』でした。
 その読後感は、下記の通りです。

檸檬』を読んで  三遊亭らん丈
 梶井基次郎

檸檬 (集英社文庫)

檸檬 (集英社文庫)

は、大正十三年十月に完成をみた小説だそうですが、今日にも通ずる面を多くもった作品です。
 「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。」との書き出しは、カフカの『変身』の冒頭を想起させ、現代人が共通してもつ愁訴をまず露呈させます。
 この”不吉な塊”は、「えたいの知れない」ものであるがゆえに、現代性を獲得しているのです。
 面白いのは、”不吉な塊”はえたいの知れないものですが、それを鎮めるのは、丸善であり、檸檬であるといった具合に、個別具体的な物象であることです。
 こうして、具体的個別な「物」のみが、えたいの知れない不吉な塊をもった現代人を癒してくれることを、梶井は図ったように読者に教えてくれたのでした。