「梶井基次郎『檸檬』」
一昨日は、まちだ中央公民館「自主男女共生学級」『近代文学と女・男の生き方』講座に参加しました。
今回採り上げられた作品は、梶井基次郎『檸檬』でした。
その読後感は、下記の通りです。

- 作者: 梶井基次郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/05/25
- メディア: 文庫
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「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。」との書き出しは、カフカの『変身』の冒頭を想起させ、現代人が共通してもつ愁訴をまず露呈させます。
この”不吉な塊”は、「えたいの知れない」ものであるがゆえに、現代性を獲得しているのです。
面白いのは、”不吉な塊”はえたいの知れないものですが、それを鎮めるのは、丸善であり、檸檬であるといった具合に、個別具体的な物象であることです。
こうして、具体的個別な「物」のみが、えたいの知れない不吉な塊をもった現代人を癒してくれることを、梶井は図ったように読者に教えてくれたのでした。