「『合衆国をつくった南北戦争』」

 小室直樹が「経」(ダイヤモンド社)に連載している、『日本人のためのアメリカ原論』の第9回(「経」2007年9月号)に、面白い記述がありました。

 「アメリカ合衆国」における大統領の地位は、当初、州知事と対等か、知事以下の位と思う人も多かった、というのです。
 では、米国民はいつから大統領を、「アメリカの元首」と考えるようになったのか、それは、リンカーン大統領以後だというのです。
 The Civil War(南北戦争)によって、米国は、資本主義国家として発展し、それにより民族国家が形成され、大統領の地位が上がった、と小室は説きます。

 それが、リンカーンが大統領だった時期と軌を一にしていた、というのです。

 面白かったのは、次の箇所です。
 英米仏蘭の連合艦隊と、攘夷を率先実行した長州藩が戦って、下関の馬関砲台を占領された際に、これを観戦していたアーネスト・サトウによれば、連合艦隊が上陸してくると、戦った武士以外の庶民は一斉に彼らに協力して、連合艦隊を驚かせた、というのです。
 たしかに、これは、今から見ると奇観ですが、まだ日本人にナショナリズムが醸成される以前だったことなので、庶民から見ると、連合艦隊は見方に思え、武士が敵だったのです。