「人には自侍があればよい!」

 ヒトは極めて強くもあり、また弱くもあります。

 ジャック・ニコルソンは、「人びとは、愛されていないと感じると、臆病な絶望の中に沈み込む」というバートランド・ラッセルの言葉を引用して、それを表現していました。(朝日新聞5月16日夕刊)

 先日、『蛹』で川端康成賞を受賞し、同作品も収めた『切れた鎖』で三島由紀夫賞も受賞した田中慎弥は、「この電車に乗っている人間の中で『源氏物語』の原文を二回通読したのはたぶん自分だけだろうな、と、不遜で、無恥で、無礼で、しかしこの世で自分にとってだけは多少の意味がないわけでもないことを思い巡らせて、卑屈に安心していた」と述懐していました。(朝日新聞6月4日朝刊)

 なるほど、このような自侍は大切です。
 中原中也も、「人には自侍があればよい!」と記しています。