「一度きり」

 人生において起こることは、一度きりということが結構あります。
 でもそれを、当人は自覚していないだけなのです。

 たとえば、一日は毎日更新されると思いがちですが、ある日それは、死を迎えることによって永遠に断続されます。

 佐々木閑花園大学)教授が、朝日新聞に連載している「日々是修行」の2008年12月11日分が、心に残りました。

 そこで、佐々木教授は、釈迦が生きていた2500年前のインドでは、まだ文字がなかったため、「お釈迦様が来ておられる」と聞いて、何日もテクテク歩いて会いに行き、そこで聞いた一度きりの教えを、一生かけて考え抜く。そういう生き方をしていた当時の信者からみれば、言葉をポイポイ使い捨てにする現代社会は、「知恵を磨くのが難しい、大変な時代だなあ」ということになる、と記述しているのです。
 なるほど、そうであれば、一生懸命に聞き入ることでしょう。