「修士論文要旨」
さる1月9日に提出した修士論文は、4万字以上ありますので、とてもこの場で公開できるものではありませんが、要旨は下記の通りです。
社会科学研究科紀要『ソシオ サイエンス』第15号 2009年 掲載(750字程度)
【修士論文要旨】
「『公務員の身分保障』に関する一考察」
−「分限処分」について−
指導教員 後藤 光男 教授
要旨
わが国の一般職の公務員には身分保障があるため、私企業労働者と比較した場合には、解雇されにくいと一般的にいわれている。それは、たとえば下記のような新聞記事によってもその一端をみることができる。
「逆風満帆」[朝日:2008.6.14朝]に、『公務員は意に反して辞めさせられることはない』との記述があり、作家で精神科医のなだいなだ氏は、下記のコメントを寄せていた。『社会全体がぎすぎすした雰囲気になる中で、安定して恵まれた地位にいる公務員』[朝日:2008.6.22朝、千葉版]
公務員を律する国家公務員法、地方公務員法では、公務員の身分に関する分限を扱った条文においては、次のように記されている。
国家公務員法78条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合
四 官制若しくは定員の改廃又は減少により廃職又は過員を生じた場合
(地方公務員法28条は、文言に異同はあるものの、同条と同趣旨のものである)
上記の条文を読む限りでは、先ほどの新聞記事とは齟齬が生じているようにも考えられるが、上記公務員法では、どのような場合に、公務員に対して分限免職処分を行なうのかを、判例をもとに考える。
それによって、公務員法は、公務員の身分保障をどのように規定してきたのかを明確にさせたい。
併せて、公務員の任用と、それが公務員の身分保障に与える影響に関しても考えを進めることによって、公務員の身分が保障されるのであれば、なぜ保障しなければならないのかを本論分において考える。