「本を読む人、読まない人」

 人間を2つのタイプに分ける際に、様々な二分法が用いられます。
 例えば、男性か女性か。未婚か既婚か。(野球の)巨人ファンかアンチジャイアンツか。
 なかで、本を読むか、読まないか、というのもあります。
 つまり、本を読まない人は、全く読みませんが、読む人は、それがないと苦しい思いに苛まれます。

 さて、「月刊百科」4月号で、林信吾が『歴史小説の読み方と読まれ方について』というタイトルで寄稿している文章に、下記のものがありました。

 “二〇〇九年春、書店に出向き、新潮文庫のコーナーで「大人買い」をした。
 『真実一路』(山本有三)、『出家とその弟子』(倉田百三)、『野菊の墓』(伊藤左千夫)、『小僧の神様・城の崎にて』(志賀直哉)、『金色夜叉』(尾崎紅葉)、『青い山脈』(石坂洋次郎)、『田舎教師』(田山花袋)、『にごりえたけくらべ』(樋口一葉)……等々、十六冊。”

 これらの小説を、林は未読だというのです。
 たしかに、本を読む人でも、名著、古典を漏れなく読んでいるとは、限りません。

 かくいうぼくも、かなり、読書傾向には偏りがあり、先ほどの林の未読本は、相当程度読んでいますが、中南米、アフリカの小説は、ほとんど読んだことがありません。