「富田朝彦元長官のメモ」

 富田朝彦宮内庁長官(故人)のメモによって、昭和天皇が1975年11月の靖国神社参拝を最後に、以来、再び参拝することがなかった理由が、A級戦犯合祀とは何の関係もない、という保守論壇の論調とは異なり、天皇の「私の心」として、参拝していなかったことが明らかになりました。

 それを受けて、今上天皇も「(昭和天皇)の御心を心として」即位後は一度も、靖国神社に参拝していません。

 もともと、徳川義寛侍従長は、「陛下は合祀を聞くと即座に『今後は参拝しない』との意向を示された」のであり、「陛下がお怒りになったため参拝が無くなった。合祀を決断した人は大ばか者」と、証言していました。

 ただ、保阪正康さんがコメントしているように、「右派にせよ、左派にせよ、天皇の言葉を金科玉条のように頼りにして、議論をするのは不健全」でもあります。

 そもそも、鈴木邦男さんは、「愛国心も尊皇心も心の中に収めておけばいい。口に出して言い立てた瞬間、嘘になる」と記しています。(朝日新聞2005年6月29日夕刊)