「偶然とはいえ大和魂」

 こういうことをシンクロニシティというのでしょうか。

 たまたまですが、同じ日に同じ文言に、まったく別の作品でお目にかかったので、それをお知らせします。

 それは、「当地昨今吉野桜の満開、故国の美を凌ぐに足るもの有之候。大和魂またわが国の一手独専にあらざると諷するに似たり」という言葉です。

 これは、真珠湾攻撃の起案者として不本意ながら対米戦の火蓋を切ることになる山本五十六聨合艦隊司令長官が、ワシントン駐在武官時代に故郷の恩師に送ったポトマック河畔の桜の絵葉書に書き添えた言葉です。

 お目にかかったのは、北海道知事選挙民主党推薦での立候補が噂される、寺島実郎の『「時代の空気」について』という朝日新聞夕刊10月2日「思潮21」に掲載されたコラムと、平川祐弘が『大和魂』と題し「月刊百科」(平凡社)に掲載したコラムです。

 平川の「大和魂」によれば、築地の海軍兵学寮では、英軍海軍将兵の教授による講義では、すべて英国風にしたため、兵学寮では国家斉唱の際も、君が代ではなく、God Save the Queenを歌ったのだといいます。

 日本海軍が誇った聨合艦隊司令長官にして、大和魂を誇大に唱える者を苦々しく思っていたことが、先の言葉を恩師に送ったことでもよく分かります。

 最後に平川が、『和魂洋才の系譜』の中に引いた森鴎外の言葉を、孫引きします。

 「苟(いやしく)も自己を偉大にしようとする限は、他の偉大を容るるに吝(やぶさか)なる筈がない」