「読書の秋に」

 秋というよりは、初冬といった塩梅ですが、目についた言葉があるので、表記のタイトルとさせていただきました。

 今年発行された、「早稲田大学法学部報」Themis第26号(Themisとは“正義”の意)に、法学部長上村達男教授による、『贈る言葉』という巻頭言があります。

 そこに、“本は体力で読め。1頁進むのがしんどいような本を繰り返し体力で読む経験こそ宝だ。”と記されていました。

 まさしくおっしゃるとおりでありまして、何が書いてあるのか、1度読んだだけではもちろん、2度3度読んでも歯が立たない本こそ、面白い本、というのがぼくの偽らざる感想です。

 ですから、読んだ本の冊数をいたずらに競うのは、ほとんど意味のないことです。
 何冊読んだか、ではなく、何をどう読んだかが問われるのです。

 『古事記』、『日本書紀』、『源氏物語』さえ読み通してはいない、古典文学のよい読者ではない自分のことは、棚に上げてではありますが。