「今、そこにある危機」

 『波』11月号で、前外務事務次官だった藪中三十二が、国家公務員1種採用者の研修で講演する機会があり、そこで、世界からみて日本が直面する最大の問題は、demographyだと訴えたものの、その大半がその言葉さえ知らなかったと驚いた旨を記していました。

 demographyとは、統計的な人口動態であり、労働人口の減少こそが日本の「今、そこにある危機」だというのです。

 たしかに、藪中が指摘するまでもなく、1980年代前半までの日本は、大戦後のサクセス・ストーリーの主役でしたが、あまりの成功体験ゆえに、このようにその取り巻く環境が様変わりしても、なかなかうまく適応できていない、という問題をまだ日本は解決できていないようです。