「つつましい楽しみ」

 大学の後期試験が終わり、政治活動一色に染まった日々を支えるつつましい喜びといったら、新聞、それも、連載小説を読むことです。

 おお、なんと、つつましい!

 新聞は朝日なので、朝刊は桐野夏生さん、夕刊は北村薫早大文学学術院客員教授)さんです。
 桐野夏生さんの小説は、この時期でなければ読んでいたでしょうが、最早、読む時間がなく、夕刊の『ひとがた流し』を専ら楽しんでいます。

 今日の場面は、特に好かったですね。
「こういうことって、一生のうちの大事件でしょ。予告編があって、連続ドラマみたいなことが何回分かあって、いよいよ山場がやって来るものと思ってた。でも、今日のわたしは、夕食の時まで、こうなるなんて、考えてもいなかった。とんでもないことって、本当にいきなりやって来るのね。……それにしたって、ねえ、わたし、《いい》なんて、ひと言もいってないのよ」

 お読みではない方々には、ちんぷんかんぷんかもしれませんが、まさしくクライマックスです。
 女性の心理を女性以上に書くことが出来る、と言う北村の面目躍如です。