「増税は厳しい」

 茨城大学人文学部磯田道史助教授によれば、幕末の藩政府は人口100人当たり役人2〜3人で、現代の3.3人よりも小さかったのです。
 ちなみに、3.3人の現代日本の役人人口も、世界的に見れば、先進諸外国の中では極めて少ない数字です。

 江戸幕府はいうまでもなく兵農分離社会だったのですが、それが300年も続くなかで、「遠くのお役人を養うのに無駄な税金を取られている」と強く感じる日本人の税意識が形成された、と磯田助教授は続けます。

 つまり、日本人は税負担に敏感で増税が難しい。
 それで、明治以来、比較的「小さな政府」を作ってきたのです。
 また、いったんお上に取られた税金の使い道はあまりチェックしない「あきらめ納税文化」も作ってきたというのですが、さて、ポスト小泉も、増税を唱える谷垣財務相と、増税阻止を目論む竹中・中川ラインとで、懸隔があります。

 しかし、日本は租税負担率が23.0%、これは、米国の23.1%よりも少なく、スウェーデンの49.9%とは較べるまでもありません。
 社会保障負担率を加えた国民負担率でも、日本の43.9%という数値は、先進諸国のなかでは、極めて低い数字です。
 なおかつ、780兆円にものぼる累積赤字があります。
 それでも増税しない、という選択を国民は取り続けるのでしょうか。