「安倍首相のディレンマ」

 27日の朝日新聞では、朝刊でシリーズ「保守とはなにか」が始まり、夕刊の論壇時評では杉田敦(法大法学部教授)による、「保守のディレンマ」が掲載されました。

 いうまでもなく、「保守の再構築」を掲げて誕生した安倍晋三首相に事寄せた記事です。

 杉田教授は、上記時評で「保守のディレンマ」を、二つ挙げています。

 ひとつは、「保守」が目指す、市場経済の重視と、文化的伝統の維持を図ることとは、他者への開き方、たとえば移民への対応をめぐっては鋭く対立するという、ディレンマです。

 前者からすれば、経済の発展のためには、移民の受け容れは歓迎されますが、後者からすれば、それは「国柄」とみなすものを脅しかねません。

 もうひとつのディレンマは、対米関係です
 安倍首相は、日米同盟の強化を唱えるものの、「わたしたちが守るべきもの」として、「国家の独立、つまり、国家の主権」を挙げます。
 しかし、米軍司令部の一部を日本国内に移転するといった内容を含む米軍再編が、日本の独立や主権に影を落とすことはないのか。

 加藤紘一自民党元幹事長は、安倍首相が提唱する改憲論にも、構造的な矛盾があると指摘します。
 「米国に与えられた憲法は嫌だ、独立したい、と言いながら、日米安保体制はより深めていく。これは、冷房と暖房を一緒にかけているようなところがある」と。

 このように、安倍首相は保守のディレンマを体現した宰相です。