「元日の新聞」

  元日の朝日新聞には毎年必ず、岩波書店が一面全面を使っての広告を出しています。
 今年は第5面でした。
 そこで、その年の目玉企画を告知するのです。
 今年であれば、岩波講座『憲法』全6巻の刊行を、4月から開始するといった内容です。
 ちなみに、同講座の編集委員は、長谷部恭男や杉田敦、ぼくの恩師でもある西原博史先生ら全6名です。

 今年の目玉は、岩波文庫が創刊80周年を迎える旨の告知でした。
 そこに、岩波文庫を創刊したときの朝日新聞の記事が掲載されています。
 それによれば、今から80年前の昭和2年当時、朝日新聞は、各面の上段に印刷する日付を、Saturday,July 9,1927 THE TOKYO ASAHI SHIMBUNといった具合に、英語表記もあわせて印字していたことが分かります。

 もうひとつ、これには驚愕させられましたが、当時朝日新聞第一面は、全面が広告だったのです。
 他新聞も第一面は、全面広告だったのかしら。

 その広告によれば、岩波文庫の第1回刊行書目は、『萬葉集』『こゝろ』『ソクラテスの弁明 クリトン』『実践理性批判』『古事記』『藤村詩抄』『国富論』『にごりえ たけくらべ』『国姓爺合戦 鑓の権三重帷子』『戦争と平和』『芭蕉七部集』『五重塔』『病床六尺』『父』『出家とその弟子』『桜の園』『幸福者』他となっています。
 このラインナップからは、古典の威力をまざまざと見せつけられた気がします。

 朝日新聞の12面には、内田吐夢監督のこんな言葉が高倉健によって紹介されています。
 「時間があったら活字(本)を読め。
  活字を読まないと顔が成長しない。
  顔を見れば、そいつが
  活字を読んでいるかどうか分かる」