「メシを食う」
メシ二題。
坂田栄男『勝つ』(徳間書店)
“「せがれはできれば碁打ちにしようと思うんですが、碁打ちでメシはくえるものでしょうか」
「メシが食えるかどうかやってみなければわからない。これは好きだからなるんであって、食えるとか食えないとかは二の次だ。そんなことを心配するくらいなら、最初から碁打ちにしないほうがいい」
囲碁の名人・本因坊坂田栄男が父君に連れられて井上棋遊の門を叩いたときのお父さんと名人の問答。”
古今亭志ん生『びんぼう自慢』(ちくま文庫)
“名人といまも言われる噺家の古今亭志ん生は、これまた名人だった橘家円喬の門に入ったとき、最初に聞かれたのが、
「お前、メシが好きかい」
「めしィ食わなきゃァ死んじまいます」
「メシを食おうなんて了見じゃァ、とてもだめだ」”
昔の碁打ちや芸人は、こんな塩梅だったのでしょう。