「鹿島茂の『書く人』」

 共立女子大学鹿島茂教授が、「図書」(岩波書店)07年11月号の巻頭頁「読む人・書く人・作る人」で、『いきなり「書く人」』と題して、日本が豊かになり、物質的な条件が満たされるようになった頃から、「書く人」は「読む人」の段階を経ないでいきなり「書く人」になろうとする、と書いていました。

 なぜいきなり「書く人」になりたがるのかといえば、それは生まれたときから、自分は他人と違っていると思いこんでいるからである。なにゆえに、こうした天上天下唯我独尊タイプの人が増加したのだろうか?それは家族制度が大家族から核家族に移ると同時に地域コミュニティーが崩壊し、自我が百パーセント自分の取り分と理解する人ばかりになったからだ、と鹿島教授は指摘していました。

 “かくして、日本は「読む人」が皆無で、「書く人」ばかりのカラオケ社会とあいなったのである。”と結んでいました。