「講談社文芸文庫」

 世の中には、2分法で考える場合があります。
 たとえば、女と男。巨人ファンとアンチジャイアンツ。うどん好きとそば好き。漉し餡か潰し餡か。
 そこで、提案したいのです。
 講談社文芸文庫を読んだことがあるか、ないか。
 その講談社文芸文庫が、昨日の朝日新聞に、丸谷才一による短評つきの広告を載せました。下記に抜粋を転載します。

 近代日本文学は、西洋文学の多彩と充実は持ち合せず、日本古典文学の洗練と高雅は欠くものの、近代と日本といふ身近な条件二つが重なるせいか、妙に切実で胸を打つ。

 丸谷は、2005年にも講談社文芸文庫に短評を寄せており、それを下記に抜粋します。

 日本人のなかで、わりに人がよくて、融通がきかなくて、馬鹿正直で、ただし言葉の才のある連中が、ほかに能がないので文筆に励んだ。その結果、一国民の證言として、最も信用できるものができた。これが近代日本文学。
 その収穫からの念入りなよりすぐりなので、人の心をとらへるのだらう。つい読みふけつてしまふのだらう。

 なるほど、うまいことをいう。