「『なつかしき金欠時代』」

 日本銀行情報サービス局が発行している、「にちぎん」13号の巻頭エッセイは、林望による『なつかしき金欠時代』というもので、なかに、“よく夫婦で話すことは、あの頃は楽しかったなあ、ということである。お金もなかったし、家も狭くて不自由だったけれど、まだ小さかった子供たちと親子四人ですごした、ささやかな幸福の日々。”という文章がありました。

 それを読んでいて思い出しました。1978年度ですから、今からちょうど30年前、ぼくは立教大学で「旧約聖書講読」という講義を受講していました。
 授業の内容はなんにも覚えていませんが、ただ一言、先生が次のようにおっしゃったのは今でもよく覚えています。“狭いながらも楽しい我が家。あれは、間違っているな。狭いからこそ、楽しい我が家なんだよ。”
 そのとき、なるほどな、と思い、林望のエッセイを読んでその言葉を思い出しました。