「うまみの和食と『財政・租税政策研究』」

 11月15日の朝日新聞で、菊乃井3代目主人が、「(和食は)油脂や糖分でなく、うまみを重視する料理はほとんど世界で唯一のもの」という見立てをしていましたが、なるほどと思いました。

 昨日の大学院の講義『財政・租税政策研究』での発表は、下記のとおりでした。
1.論文のテーマと構成(章立て)
(章立て)

まえがき

第1章 国会議員の歳費と地方議会議員における報酬の相違
第1節 憲法と法にみる国会議員
第2節 法にみる地方議会議員
第3節 地方議会議員の兼職禁止規定について
第4節 地方議会議員の報酬の位置づけ

第2章 国会議員の年金
  第1節 国会議員年金の概要
  第2節 国会議員年金が廃止された経緯

第3章 地方議会議員の年金
  第1節 地方議会議員の年金の概要
  第2節 地方議会議員の年金に関する問題点
  第3節 「世界的にも類例がない特権的な制度」渡部記安(立正大学社会福祉学部)教授
第4節 地方議会議員年金制度検討会、第29次地方制度調査会の動き

第4章 地方議会議員年金制度の今後の展望
  第1節 存続させるべき場合の問題点
  第2節 廃止すべき場合の問題点
第3節 地方議会議員年金は廃止すべきなのか存続させるべきなのか

あとがき

【各章の概要】
まえがき
 本論分において、地方公共団体の議会の議員(以下「地方議会議員」という。)の年金を取り上げることにした経緯を記す。それは、つぎのようなものとなるであろう。
 私事ではあるが、2006年に市議会議員選挙において初当選し、任期最初の月に支払った議員共済掛金は71,500円であった。しかしそれから3年有余を経て、直近の議員共済掛金は88,000円である。以後、この掛金が逓増することは容易に予測されるところであるが、受給適格者となった際に、年金を受給できるのかは不分明である。このような議員年金を存続させるべきなのか否かを本論分において考究することを目的とする旨を記す。
第1章 国会議員の歳費と地方議会議員における報酬の相違
第1節 憲法と法にみる国会議員
日本国憲法49条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
国会法35条 議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける。
同 法36条 議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。

第2節 法にみる地方議会議員
地方議会議員の職とはなにかを本節において明らかにする
 「地方公共団体の議会の議員は特別職である。」(『新版 逐条地方公務員法』橋本勇、学陽書房、2002年、55頁)
地方公務員法3条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
  3 特別職は、次に掲げる職とする。
1 1.就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職
2
第3節 地方議会議員の兼職禁止
 「地方公共団体の議員が兼職を禁止され、又は地方公共団体の議員との兼職が禁止されているのは、次のとおりである。?衆議院議員又は参議院議員地方自治法92?・国会法39)、?他の地方公共団体の議員(地方自治法92?。(略))?地方公共団体の常勤の職員(地方自治法92?)、?普通地方公共団体の長(地方自治法141?)、?副知事又は助役(地方自治法166?による141の準用)?まであるが以下略」(『要説 地方自治法』〔第四次改訂版〕松本英昭、ぎょうせい、2005年、273-4頁)
第4節 地方議会議員の報酬の位置づけ
 労働基準法9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
10条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
 11条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
 後述する地方自治法203条が適用される地方議会議員は、労働基準法における「使用」性と「賃金」性の2点をともに満たしていないため、労働基準法が適用される「労働者」ではない。
e.g.生活給としての視角からの考察、議員に常勤並みの活動を期待するのか、地方議会議員には退職金がない、福島県矢祭町議会議員は日当制
昭和36年5月30日参議院地方行政委員会
 政府委員 渡海元三郎自治政務次官
 現在の地方自治法の給与体系におきましては、常勤の特別職に対しましては、ただいま申されましたように、一般公務員と同様な退職年金の制度あるいは給与制度が確立されておりますが、現在の地方自治法の給与体系の中では、非常勤の特別職、議員等につきましては、戦前の観念のいわゆる名誉職的なものは付与いたしておりませんが、給与関係におきましては、あくまでも実費弁償報酬という形で行なわれておるところにそういった根本的な欠陥があるのじゃなかろうかとも考えております。しかしながら、この給与体系を現在の議員の実情、勤務の状態に合わして解決するのは非常に困難な状態でありますし、とりあえず今度議員提案されます議員年金制度も、まず自分らで互助年金を作られますような制度のもとにこの欠陥を補おうとされているんじゃないかと、かように考えております。(下線引用者)

第2章 国会議員の年金
  第1節 国会議員年金の概要
  第2節 国会議員年金が廃止された経緯
国会議員年金の廃止法案が2006年2月3日の参院本会議で可決、成立し、2006年4月1日施行された。
第3章 地方議会議員の年金
  第1節 地方議会議員の年金の概要
  地方公務員等共済組合法 第11章 地方議会議員の年金制度
   (地方議会議員共済会)
151条 次の各号に掲げる地方公共団体の議会の議員(以下「地方議会議員」という。)の区分に従い、当該各号に掲げる地方議会議員をもつて組織する当該各号に掲げる地方議会議員共済会(以下「共済会」という。)を設ける。
1.都道府県の議会の議員
都道県議会議員共済会
2  2.市(特別区を含む。以下この章において同じ。)の議会の議員
市議会議員共済会
3  3.町村の議会の議員
町村議会議員共済会
2 共済会は、法人とする。
3 共済会は主たる事務所を東京都に置く。
4  第2節 地方議会議員の年金に関する問題点
 地方議会議員年金は、都道県議会議員共済会、市議会議員共済会、町村議会議員共済会によって、それぞれ運営されているが、「平成の大合併」により、多くの町村が合併した結果、町村議会議員は劇的に減少した。そのため、町村議会議員共済会の運営は困難を極めているという特段の事情の説明。
 第3節 「世界的にも類例がない特権的な制度」渡部記安(立正大学社会福祉学部)教授
 上記渡部教授の指摘への検証。
第4節 地方議会議員年金制度検討会、第29次地方制度調査会の動き
今年3月から始まった、総務省地方議会議員年金制度検討会と第29次地方制度調査会の内容も逐次サーベイしていきたい。

第4章 地方議会議員年金制度の今後の展望

あとがき
 
2.問題関心
わが国の国会議員は、憲法49条により、「歳費を受ける」者であり、歳費とは、「一年を基準としての金額を定める支給金をいう。(略)(ロ)歳費は、議員の勤務に対する報酬たる性質を有する。」(『全訂 日本国憲法宮澤俊義芦部信喜日本評論社、1978年、373-4頁)とされている。なお、議員の歳費について、「議員に歳費を与えることはむしろ否定的に考えられたが、しかし、議員たる職務に従事することは、その者の他の仕事に多くの犠牲を与えることであり、これに全然歳費を与えないということになると、実際には、無産者に対して議員となることを禁ずる結果になり、また、議員が金の面で不当に政党その他のボスに支配されるという弊害も生ずるおそれがあるので、しだいに国庫からこれに歳費を与えるという原則が行われるようになってきた。」(上掲書、372-3頁)との説明もある。
それに比して、地方議会議員は、地方自治法203条1項によって、つぎに記す報酬が支給される者である。「普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。」そこで、報酬とは何かが問題視される。「報酬とは、本条では、議会の議員が行う勤務に対する反対給付である。役務の対価である点で(2項にある)「費用の弁償」と区別され、生活給ではない点で、常勤職員への「給料」とは区別される。」(『注釈地方自治法』〈全訂〉第一法規、藤原淳一郎、3725の2、下線引用者)とある。
つまり、地方議会議員が受ける報酬とは、地方自治法上「生活給ではない」のである。
したがって、議員報酬は、日当制にしたほうが、「議員に経済的な魅力がなくなり、議員本来の仕事に魅力を感じて立候補する人がさらに増えるのではないか」(片山善博・慶大教授、2008.3.15朝日新聞[朝])という意見がでるが、それに反して「日本の市町村は規模が大きくなってかなり専門性を要するので、軽々に無給にすればいい、という議論にはならない」(名和田是彦・法大教授、同上)という意見もでる。日当制に関しては、上記藤原教授はつぎの解釈を付す。「かつて市町村議会の議員報酬につき、年酬が適当であるとの行政実例がある(昭和21年12月27日地発乙641号)が、現行法解釈の決め手にはならないと、私(藤原)は考える。」(上掲書、3725の3)
議員報酬でさえこのように、議論百出であるが、それを踏まえたうえで、それを因にした議員年金について論を進めていきたい。
 翻って、(地方議会)議員の主たる活動の舞台である議会、その招集に目を転じると、地方自治法にはつぎのように記されている。「102条 普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会とする。2 定例会は、毎年、条例で定める回数これを招集しなければならない。3 臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する。」
現在のところ、条例上ほとんどの地方公共団体での議会は、改正前の地方自治法にあったように、年4回の定例会が開会され、一定例会での会期は通常約1ヶ月である。したがって、議会活動は年間約4ヶ月程度であるため、議員は非常勤の職と考えられるが、その報酬の対象とされる活動は、多くの地方公共団体では明確化されていない。このような地方議会議員にとって、独自の年金である「地方議会議員年金制度」は、どのように構築されるべきものであるのか、あるいは廃止すべきものであるのか、それを本論文において考察することに筆者の関心はある。
3.分析対象・史資料
地方議会議員年金制度検討会」議事録(総務省HP)
「第29次地方制度調査会」議事録
村松岐夫伊藤光利『地方議員の研究』(日本経済新聞社、1986年)
渡部記安『21世紀の公私年金政策』(ひつじ書房、2003年)
建林正彦『議員行動の政治経済学』(有斐閣、2004年)
山崎正『地方議員の政治意識』(日本評論社、2003年)
佐々木信夫『地方議員』(PHP新書、2009年)