「慟哭の書」

 昨年の『波』(新潮社)6月号から連載がはじまった、永田和宏による「河野裕子と私 歌と闘病の十年」が、同誌5月号をもって完結しました。
 『波』では、この1年間、この連載をなによりの楽しみにしたものです。

 河野裕子とは、いうまでもなく、永田の妻であり、戦後歌壇ではおそらく最高の歌人のひとりに数えられるべき方であり、一昨年お亡くなりになった後、その追悼は歌壇のみならず、社会現象まで引き起こされた方です。

 永田によるこの手記を読んで、何度慟哭したかしれませんが、今号の最終回にはほとほと泣かされました。
 この書は、戦後日本が生んだ最も優れた散文のひとつだと、感じ入った次第です。