「総選挙−自民党はどんな政党になったのか」

 いよいよ総選挙が、始まりました。

 この選挙を、自民、公明の両政権与党は郵政民営化の是非を問う選挙と位置づけ、野党第一党として、単独与党を狙う民主党は、政権選択選挙と捉え、共産、社民両党にとっては、退潮する党勢の回復を願う選挙として、国民への浸透を図っています。

 さて、自民党ですが。
 結党50年の節目の総選挙にあたり、従来とはまるで違う政党へと、変わりました。
 どう変わったのか。一言で言うならば、自民党は鵺のような包括政党=catch all partyから、理念政党への脱皮を果たした、といえるでしょう。

 その現われとして、郵政民営化に反対票を投じた全議員に公認を出すことなく、逆に、新たな公認候補を立てたことが挙げられます

 従前の自民党であれば、思いもよらないことを、小泉総裁は断行したのです。

 つまり、いままでの自民党は与党であることが、最大の目的であったのですから、たとえ、反対票を投じた議員に公認を出さなくても、そこに自民党の新人公認候補を出すことは、ありませんでした。

 そんなことをすれば、野党第一党民主党にみすみす“漁夫の利”を与えるようなものだからです。

 けれど、小泉総裁は、たとえ自民党が政権与党の座を滑り落ちても、今回は郵政民営化を推し進めるために、理念を確立し、それへの遵守を全候補者に求めたのです。

 いままでの自民党では遂に成し得なかったことですが、これは、議会制民主主義であれば、ごく当たり前のことに過ぎません。

 山崎正和が、「『論理の政治』に脱皮か」(毎日新聞8月16日朝刊)で記したように、「論理の筋だけで政治をやろうとする指導者が出てきたといってもいい」のであり、もはや、「情の政治」への後戻りは、小泉純一郎が総裁である限り、自民党が選択することはありえないのです。