「権力闘争だった、郵政民営化」

 朝日新聞が先の総選挙の翌日と翌々日に行った世論調査で、読者に総選挙の結果を評価してもらったところ、「よかった」が47%、「よくなかった」が31%でした。
 ところが、10月1日の同紙によれば、時間をおいて同じ調査をしたところ、「よかった」が33%に減り、「よくなかった」が67%に急上昇した、ということです。
 なおかつ、「よくなかった」と答えた67%のうち、56%の方が、その理由として、「自民党が勝ち過ぎた」と答えたそうです。

 また、さる21日自民党は、郵政民営化に反対票を投じた衆参両院議員59人のうち、9人の離党届を受理せず、同日付で除名処分とすることを決めました。
 処分を受けた前衆院議長の綿貫民輔国民新党代表は、「自民党という政党には潤いも何もない。戦国時代みたいに殺し合い、またこのように罪人扱い。良識ある国民がどう判断するか」と話した、ということです。

 19日には、小泉首相は総選挙を振り返って、自民党本部であった「日本夢づくり道場」において、郵政民営化を巡る党内の駆け引きが「当初の政策論が政局、権力闘争に転じた」と説明し、造反について「政治家の資質は洞察力。本質を見抜けず、ついて行った人は本当に可哀想だ」とも話し、続けて、「今日の友は明日の敵。戦国時代じゃなくても人間の社会。わきまえながら友情を育むことが大事」と結んだ、そうです。

 なるほど、権力闘争ならば、郵政民営化に反対した議員に対して、あれほど苛烈な処分をもって報いたことも納得できようというものです。
 たしかに、郵政民営化に反対した議員はぼくにしたところで、眉を顰めたくなるような言動を弄していた方がいたのも事実です。
 けれど、あれはちと遣りすぎなのではないか、ぼくはそう思うのです。
 もともと自民党は、先ごろお亡くなりになった後藤田正晴宮沢喜一河野洋平加藤紘一から、中曽根康弘亀井静香まで、実に多彩な人材を擁していた包括政党だからこそ、ある種の魅力があったのです。
 それが、党内で総裁にものをいえない雰囲気となってしまったことは、今回の総選挙の結果もたらされた、大きなマイナス要素だと、ぼくは思っています。

 そもそも小泉首相に、“友情を育んだ人”はいらっしゃるのかしら。