「初めて水洗便所に手を突っ込む」

 今日、早大で大いなる排泄を済ませ、さて、手でも洗おうかと、洗面台に向かう途中、ベルトの専用ケース内の携帯電話を確認すると、ないのです。
 しまった。流しちまった。もう後の祭り。水に浸かって携帯はおじゃん、というよりも流されて、回収不能
 ワーン、700件分の電話番号はどうすりゃいいのよ、人生最大のピーンチ。
 そうなるとドッと、汗が出るものですね。まさに、冷や汗。  
 あわてて、先ほどまで使用していた個室に戻り、隈なく探すもやはり、どこにもありません。
 こうなったら、仕方がない、ぼくは決死の覚悟(過剰表現)で、西洋便器のなかに、手を突っ込んで携帯を探すも、やはり、影も形もありません。
 ちなみに、水はもちろん上水道を使用しているために、綺麗なもんです。
 でも、2度同じことは、出来ましぇんでした。

  あわてて事務室に駆け込み、トイレに携帯を流した旨を告げると、「それは、どうしようもありませんね」との御託宣。
 おっしゃるとおり。

 ただ、ちょっと冷静になってみると、数々の疑問点が出てきました。
1、トイレはどうして携帯電話を、スムーズに流し去ってしまうことに成功したのか?

2、ベルトの携帯電話ケースのふたはちゃんとしまっているのに、どうして電話が飛び出たのか?

3、携帯電話が、落ちれば、ポチャンと音がするはずなのに、どうして音が聞こえなかったのか?

 ここで、ぼくは数少なくなった公衆電話に駆けつけ、携帯電話の番号にかけると、これがちゃんと呼び出すのです。

 あれれ、水に浸かればおじゃんのはずなのに、どうして生きているのだろう。
 もう一度かけると、カバンが震えるのです。

 ここに至り、カバンの中に携帯電話が落ち、バイブで震えていることを覚り、カバンの中を探すとありました。
 新聞紙の陰に潜んでいたのです。

 んなろう、心配かけやがって。
 でも、ほんと、あってよかった。

 トイレに入ってしゃがむときには、携帯にはくれぐれも気を付けましょう。