「藤原正彦『国家の品格』」

 橋本治の『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない』(集英社新書)は、大幅に増刷されているそうです。

 また、藤原正彦お茶の水女子大学理学部数学科教授)の著書『国家の品格』(新潮新書)は、20万部を超える売れ行きだそうです。

 どの世界にも、振り子の原理は適用されます。
 政界で言えば、次の国政選挙では、自民党議席減少が取り沙汰されるのも、その顕われです。

 その伝でいえば、今日の言論界では専ら、反市場原理主義の動きが活発です。

 その流れに乗っているのが、上記の2著書です。

 たとえば、「消費者が安く米を買えれば、日本から百姓がいなくなってしまっても構わない」という意見に異議を挟むのが、藤原教授です。

 そして、この考えは、藤原とは真っ向から意見を異にする井上ひさしも言っているのですから、面白いものです。

 この書で、藤原がしばしば言及するのが、現今の経済界を席巻している新古典派経済学がいかに間違っているか、ということです。

 “流行中の新古典派経済学は根本的に間違っていると思うのです。人間の幸福は眼中になく、個人や社会の富裕度をいかにして高めるかしか考えない”

 と言っていますが、まさしくその通りですね。