「中野好夫のこと」

 昨日の日記には、日本人が幼稚だと記しましたが、もちろんすべての日本人が幼稚であるわけでは、ありません。

 例えば、中野好夫
 シェイクスピアの翻訳でぼくが好きだったのは、中野好夫でしたし、何よりもそのエッセイが面白かった。

 『悪人礼賛』を、見よ。
 “由来ぼくの最も嫌いなものは、善意と純情の二つに限る。”という書き出しのエッセイです。
 “考えてみると、およそ世の中に、善意の善人ほど始末に困るものはないのである。”と続くエッセイは、実に、大人の文章です。

 あるいは、「いうならば私は社会主義を信ずる保守主義者である」ともいう。
 まさしく、大人の言葉です。