「加藤周一『夕陽妄語』」
朝日新聞は、大岡信の『折々のうた』をはじめ、実に多くの名物記事がありますが、なかでも加藤周一による『夕陽妄語』は、長大なる連載期間と相まって夕刊の名物コラムです。
25日に掲載された今月分も、楽しめました。
吉田秀和の亡くなった夫人、バルバラ・吉田=クラフトの研究成果から筆を起こし、“西洋における「エッセー」が思想の分析を目的とするのに対し、日本の「随筆」はある事象に対する感情的反応を叙述する。思想の構造や一貫性は「エッセー」にあって、「随筆」にない。しかし、複雑な感情的反応の叙述はしばしば精緻を極める。”へと到る記述は、誠に尤も至極であります。
11月27日分では、以下のように記しています。
“「愛国心」は政治的に利用せず、おのずから起こるに任せればよい。”
“われわれも安倍首相と共に「美しい国」をつくろう。信州のカラ松の林と、京都の古い町並みを保存し、人麻呂や芭蕉が残した日本語を美しく磨こう。そのとき愛はおのずから起こるだろう。そして尊大な、誇大妄想的な、殺伐で同時に卑屈なナショナリズムを捨てればよい。”