「吉本隆明健在」

 文学者とは、言葉によって時代を表現する人の謂いですが、4月28日の朝日新聞でインタビューに答えて、吉本隆明が、「飲料会社がペットボトル入りの水を売り出したころから兆しはあった。」と発言し、中流だと思っていた層が、生活基盤が危うくなって下に落ち、あわて始めるのが、ちょうど上記のように日本では、ペットボトル入りの水が売り出され始めたころと軌を一にしているというのです。

 それは、人間の労働に価値を置く経済が、使用価値はあるものの、交換価値はないとされてきた、水や空気を売り物にするようになった、つまり“効用”に満足を見出す考えへの転換がなされたというのです。

 こうして、日本人はいつの間にやら、古典派経済学から新古典派経済学への移行を果たしたというのですが、それを吉本はペットボトルを例に出して、一言で説明しているのです。

 同記事で吉本は、以下のようにも発言しています。
 「資本主義の経済や社会の安定は、中流階層の安定度に依存する。」
 「希望のない若い人に答えを出さないと、社会が不安定になる。昔は戦争になったが、いまは(中略)考えられなかった個人犯罪が増えている。」