「憲法の実質的意味」
今日は憲法記念日なので、日本国憲法に、昨日に続いてふれます。
今日の日本で、最も定評がある憲法の参考書といえば、多くの方は、芦部信喜『憲法』(岩波書店)を挙げることでしょう。
その芦部『憲法』に関して、私が受講した西原博史(早大)教授は、「1回読むと何となく分かった気になるが、よく読むと茫漠としてしまう」旨の発言を憲法の講義で話していましたが、その西原先生にしろ、先生の恩師、大須賀明『憲法』(青林書院)と並んで、芦部『憲法』を参考書に挙げていました。
芦部『憲法』は現在、高橋和之(明大)教授補訂で第四版が出ていますが、ぼくは新版補訂版を持っているので、そこから引用させていただきます。
まず、憲法の実質的意味は、芦部によれば、次の二つに絞られます。
一つは、近代に至って一定の政治的理念に基づいて制定された憲法。
つまり、政治権力とそれを行使する機関、権力の組織と作用および相互の関係を規律する規範が、固有の意味の憲法。
いわゆる統治機構と称されるもので、英語のConstitutionは、ここから来ています。
もう一つは、国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする憲法。
これは、立憲的意味の憲法と称され、専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義の思想に基づく憲法です。
上記の憲法の理念を、敢えて知らないふりをする代議士がいるのはみなさんご存じの通りです。
たとえば、自民党のO代議士と内野正幸(中大)教授が、2004年2月に衆院憲法調査会小委員会で、こんな議論をしています。
代議士「憲法には権利規定が多いが、国民の義務規定が非常に少なく、バランスを欠く」
教授「国家権力を制限し人々の人権を保障するのが、歴史的にも今日的にも憲法の最も重要な、そもそもの任務。権利が多く義務が少ないのは自然の成り行きだ」
代議士「いや憲法はむしろ、政府と国民が互いのなすべきことを規定し合う契約と見なす方がうまくいくのでは」