「安倍首相の発言」

 昨日松岡農水相が自殺を遂げたことを受けて、安倍首相は、2回にわたって公式の発言をなさいました。
 1回目は、午後3時半。2回目は、午後6時。
 1回目の会見で、記者団に今の気持ちを訊かれた首相は、このように発言しています。
 「大変残念です。慙愧に堪えない思いです。ご冥福を心からお祈り申し上げたいと思いますし、残された奥様はじめ、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げたいと思います。」

 潤んだ眼でこのように答えた首相をご覧になった方は、たくさんいらっしゃることでしょう。
 ただこの、「慙愧に堪えない」をどのような趣旨で首相は、話されたのでしょうか。
 新聞報道(朝日新聞)によると、「こういう結果に至ったことへの自らの責任を、この言葉に込めた」と、首相周辺は解説したそうです。

 となると、「慙愧に堪えない」発言は、動転して思わず口をついた言葉というわけではなさそうです。
 であるならば尚更、果たしてこの「慙愧に堪えない」という発言は適切だったのかどうか。

 少なくとも、ぼくが同じ立場であったならば、絶対に使ってはいませんでした。
 たとえば、「言泉」(小学館)では、“慙愧”を以下のように説明しています。
1、いろいろと自分のことを反省して心からはずかしく思うこと。
2、悪口を言うこと。

 松岡代議士を農水相に任命した安倍首相は、それを恥ずかしいと、本当に思ったのでしょうか。
 それを恥ずかしいと思うのは、かなり特異な心の動きだと、ぼくは思います。