「水先案内人を心の友に」

 近代の扉をこじ開ける切っ掛けとなったものの一つに、羅針盤の発明が挙げられます。
 これによって西洋人は、ヨーロッパから遥遥と大西洋、太平洋へと乗り出すことが可能となり、遂には、東洋をも彼らは我が物とすることに成功したのでした。

 ところが、肝心の羅針盤を手に入れても、水先案内に優秀な者を就けなければ船は安全に、港から出たり入ったりすることはできません。

 早い話が、様々な分野で信頼できる水先案内人を持っていると便利だということです。

 たとえばぼくは、作家の沢木耕太郎の映画評を信頼し、彼の推薦作を観て期待を裏切られたことは、(あまり)ありません。
 
 俳句ならば、加藤郁乎が好きだ。
  通り雨おなつかしいはねえだらう
  なんだねえ改まつてさ扇おく
  汗ぬぐふ八方美人じつは野郎

 歌人ならば、穂村弘。好いじゃない。
 穂村が『ちくま』に連載している「絶叫委員会」15で、甲本ヒロト作詞の「リンダリンダ」を採り上げていました。

 「愛じゃなくても恋じゃなくても君を離しはしない」

 穂村が言うように、このような、“ど真ん中の直球には、目も覚めるような意外性が必ず含まれている”ものです。