「困った認識=バーネット洋子さん」

 ぼくは、どうしようもないものには一々興味を抱かないようにはしていますが、目に余る場合には、黙ってはいられなくなります。
 たとえば、9月18日の朝日新聞読書欄で、辛酸なめ子さんが「ポケットから」において、バーネット洋子という方の、『ブランド品を持っていい人、悪い人』(中公新書ラクレ)という本を取り上げていました。
 ぼくは、その著作を読んではいないので、間違っていたら申し訳ないのですが、その中で、バーネットさんは“ヨーロッパでは「自分の人生のすべてがそのブランドにふさわしいものに到達したという証に、ブランド品を求める」というのに、日本では猫も杓子もルイ・ヴィトン。”との記述をしていると、辛酸なめ子さんが指摘していました。

 “イギリスのような厳密な階級社会ではないため、皆同じブランド品や、ブランド学歴、ブランド企業に殺到してしまう”と、続けていますが、ヴェブレンの『有閑階級の理論』における、「衒示的消費」をご存じの上であのような物言いをするのでしたら、いい度胸だと、感心させられるのです。

 そこでヴェブレンが強調するのが、消費は合理的な選択とかけ離れた誇示的な浪費を含み、それは人間の福祉に寄与するものではないと、すでに19世紀において指摘しているのですから、何を今さらそんなことを記して、著作として出版してどうするのだろうか、と思うのです。